天才とは普通でないことかもしれない。アスペルガー、高機能自閉症の学生への教育
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テンプル・グランディン博士 コロラド州立大学助教授 Colorado State University Fort Collins, CO 80523, USA

私は、知的才能のある子供たちがアスペルガーや高機能自閉症というレーベルを与えられることで、チャンスを奪われていることが大変気になっています。昨年、私は何人かの両親たちと話し、彼らの言ったことに動揺しました。私に電話連絡してきた1人の母親は彼女の6歳の息子がアスペルガーだということに大変取り乱していました。彼女は息子の知能指数は150だと言います。私は、こう答えました。アスペルガー症候群とわかる前は、子供は知的才能があるというポジティブなレーベルがあったのですよ、と。

他のケースでは、アスペルガーを持つティーンエージャーの男の子の両親が電話してきて息子の社交的なスキルが低いのがとても心配なので、コンピュータのプログラミングをさせないようにしていると言いました。私は彼女に、あなたの息子さんにとってコンピュータのようなやりがいのあるキャリアを奪うことは、息子さんの一生を惨めなものにしますよ、彼は、他のコンピュータ好きな人たちと興味を分かち合うことで社会的な交流を得られるんですよ、と。また、ある大変賢い子供は、自閉症というレーベルをつけられているため、ギフティド・プログラム(才能のある子供への特別な学校プログラム)に入学許可されませんでした。教育者たちは、知的満足の与えられる仕事が人生を意味のあるものにするという事実に気がつく必要があります。

高機能自閉症やアスペルガーとレーベルをつけられた 才能のある子供たちは、コンピュータのプログラムのような分野で訓練を受けることは大切です。そこで彼らは知的満足のいく仕事ができるからです。「自閉症やアスペルガー症候群の人にあった仕事選(Choosing the Right Job for People with Autism or Asperger's Syndrome)というタイトルの私のペーパーを読んでください。私のようなアスペルガーを持つ多くの人にとって私の人生は私の仕事そのものです。もし、知的に満足のいく仕事ができなければ、人生は価値がないでしょう。私は洪水で大学の図書館が破壊された時、このことに初めて気づきました。その洪水が起こったとき、私はAmerican Society of Animal Scienceの会議に出席していました。全国紙USA Todayの一面を見て洪水について初めて知ったのです。私は、ほとんどの人が亡くなった人を嘆き悲しむのと全く同じように「死んだ」本に悲しみました。本が壊されたことは「思考が死んだ」ことになるため私は大変悲しかったのです。ほとんどの本は他の図書館にまだありますが、その大学の人たちの多くはその本を決して読まないでしょう。私にとって、シェークスピアの劇を演じ続ける限り彼は生きているということになるのです。私は私の仕事そのものです。もし、畜産会社が私の設計した施設を使い続けるのなら、私の「思考は生きて」おり、私の人生は意味を持ちます。牛や豚の処置法の改善という私の努力が世の中の真の向上につながれば、人生は意義のあるものになるのです。

私は、 リナックス(Linux)の無料ソフトウエアについての雑誌の記事の多く読み、とても気持ちが満たされました。ビジネス業界の人々は、コンピュータ業界の人がなぜ自分の仕事を分け与えてしまうのか理解できないでしょう。私はこのことを考えるとどうしても感情的になってしまいます。なぜ彼らがコンピュータのオペレーティングシステムを進化し、絶えず向上させようと自分の知的アイディアをダウンロードし、空に放り出してしまうのかは私には全く不思議ではありません。それは、彼らの思考がコンピュータシステムの「遺伝子コード]の一部として永久に生き続けるからです。彼らは自分たち自身をプログラムに入れ、その「知的遺伝子」はサイバー・スペースの中で永遠に生きるのです。プログラムが進化し、変化するに従って、彼らが書いたコードはおそらく奥深くに隠れてしまうでしょう。それは、絶えず進化し、向上する生物にかなり近い感じです。私やプログラマーの人々にとってLinuxへの貢献は人生をより意義のあるものにしてくれるので私たちはそれを行うというわけです。

(自閉症の)特性の連続体(スペクトル)

人格や知的な特質に関して正常から異常までのひとつの連続体(スペクトル)が存在します。どの地点で優秀なコンピュータ・プログラマーやエンジニアがアスペルガーというレーベルをつけられるのでしょうか。白と黒のはっきりした境界線はありません。サイモン・バロン コーエンというケンブリッジ大学の自閉症の研究者によると、自閉症の人の家系に通常の2.5倍の数のエンジニアがいることがわかりました。私はまさにこのパターンにはまります。私の祖父はエンジニアで飛行機の自動操縦の発明者の1人でした。私のいとこの二番目と三番目はそれぞれエンジニアと数学者です。

最近の講義でバロン・コーエン博士はアスペルガー症候群の特に優秀な3人の例について述べていましたが、それは物理学の学生、コンピュータ・サイエンスの学者、数学の教授についてでした。ビル・ゲイツもアスペルガーの資質をたくさん持っているようです。 タイム紙の1つの記事は私をゲイツ氏と比較しました。たとえば、私たちは二人とも体を揺らし、ロッキングします。私もビル・ゲイツがテレビで体をロッキングしている映像を見たことがあります。ビジネス雑誌の記事にいくつか、子供のときのゲイツ氏の並外れた記憶力について述べたものがありました。

高機能自閉症とアスペルガー症候群は強い遺伝的な要素があるという証明があります。 G.R. デロングとJ.T. ダイアーは、高機能自閉症の人がいる家族の3分の2が一等親血縁者か二等親血縁者にアスペルガー症候群を持っている人がいることを発見しています。 Sukhelev Naraganと同僚の研究者がJournal of Autism and Developmental Disordersに発表した記事によると優れた言語のスキルを持つ自閉症の子供を持つ両親の学業成績は正常の子供を持つ同程度の親のものより優れていることが多いということです。ペンシルバニア州立大学のロバート・プロミン博士は自閉症がかなり遺伝的なものだと述べています。

拙著『自閉症の才能開発 自閉症と天才をつなぐ環』(Thinking in Pictures)で、私は知的才能、創造性と異常性の関連性について一章を捧げています。アインシュタインは自閉症の資質をたくさん持っていました。3歳まで言葉がなく、外見を気にしませんでした。散髪されていない髪の毛は当時のヘアスタイルにそぐわないものでした。

天才とは普通でないこと?

どの分野においても天才には普通でないところがあるようです。数学のような1つの分野に優れた子供や大人は他の分野で大変劣っていることが多く、才能が一定していません。アインシュタインは綴りや外国語が不得意でした。卓越した物理学者である リチャード・ファインマンも他のいくつかの教科が不得意でした。

ひとつの分野において真に優れていることが、ある種のタイプの異常性と関連していると示唆する文献のレビューもあります。ジョーンズ・ホプキンス医大のケイ レッドフィールド・ジャミソンは躁うつ病と創造性との関係を示した多くの研究をレビューしています。アイオワ大学のN.C. アンドレアソンも創造的な作家の80パーセントが人生のある時点で気分障害(mood disorder)にかかっていることを発見しました。アイオワ州立大学でカミラ・ペーションによって行われた数学の天賦の才能についての研究によると数学の才能に恵まれることは、近視やアレルギーの発症率と関連があるということです。私は最近アリゾナのフェニックスにあるバロー脳研究所(Barrow Neurological Institute)で行われたロバート・フィッシャーの講義に出席しました。彼によると多くの偉業を遂げた人々、ジュリアス・シーザー、ナポレオン、ソクラテス、ピタゴラス、ヘンデル、チャイコフスキー、アルフレッド・ノーベルといった人々はてんかんを持っていたということです。雑誌Wiredの2001年12月の記事は、自閉症とアスペルガー、またエンジニアとコンピュータ・プログラミングの関連性を論じていました。自閉症やアスペルガーの発症はテクノロジー会社の社員の子供に増加しているとのことです。ほんの少しの自閉症の遺伝子は知的に利点となりますが、遺伝子が多すぎると重い自閉症を引き起こすのかもしれません。

思考の方法

アスペルガーや高機能自閉症を持ち、才能に恵まれた人々には2つの基本的な思考方法があるようです。教育業界に携わる非常に社交的でおしゃべりの人々は、彼らの思考処理法が違うことを理解する必要があります。2つのタイプは、私のように完璧にビジュアルで思考をする人々とトーマス・ソーウエルの著書「Late Talking Children」で述べられているような音楽、数学、記憶に優れた人々です。私はこの人たちの何人かにインタビューしましたが、思考パターンにビジュアル(絵)はありませんでした。ソーウエルは言葉の遅い子供の家系において、74パーセントの家族にエンジニア、もしくは物理、会計、数学などの高い技能が要求される分野に親戚がいることを発見しました。また、これらの子供のほとんどに楽器を弾く親戚がいました。

私の思考のすべては絵で表されます。犬について考えるとき、特定の犬の一連の絵、たとえば、私の学生の犬や近所の犬などの絵が見えます。私の心の中には言葉で表された総称としての「犬」という概念はありません。私は、すべての犬が共通に持っていて、猫が持っていない特徴を探し、私の犬という概念を形づくります。たとえば、品種が異なっても犬はすべて、同じ種類の鼻を持っています。 普通の人はほとんど一般的なものから具体例を考えますが、私の思考過程は具体的な絵から一般的な概念に移行します。私の頭の中には、はっきりしない、抽象的で、言葉をベースにした概念というものがありません。具体的な絵があるのみです。

デザインの仕事をするとき、私は頭の中で 三次元の、動きのある「映像」で 畜牛処置施設のイメージを描きます。想像の世界で「仮想現実」のコンピュータ装置を「テスト運転」させることができます。熟練したコンピュータ・プログラマーでビジュアル思考の人たちは、全体のプログラムを「木」として見ることができ、その木の枝それぞれにコードをかくと言っています。

これはまるで私が二つの意識を持っているようなものです。絵は私の本当の思考で、言語はナレーターのように振る舞います。私は想像の中の「ビデオ」と「スライド」を使って話します。たとえば、私のナレーターである言語が「それはデザインが可能です」と言うとします。それから、私は頭の中でデザイン中の処置施設の映像を見るわけです。正しい答えが頭の中に浮かんできたら、それはうまくデザインできた施設の映像の一部です。この時点で私の「言語ナレーター」が「どうすればいいかわかりました」と言います。私の頭の中には潜在意識というものがありません。イメージは絶えず私の想像の中のコンピュータ・スクリーンに浮かんできます。他の人の思考過程というのは、言語で覆われているようですが、私は意識、思考の両方に言語を必要としません。

私は、デザインの仕事で製図を学んだとき、 配置図と実際の建物のシンボリック・ラインをビジュアル思考の頭に関連づけるトレーニングをするのに時間を要しました。これを学習するために私はいくつかの青写真を撮り、建物の中を歩き回って、コンクリートの正方形の支柱を見たり、この実際の支柱に製図上の小さな正方形がどのように結びついているかを見たりする必要があったのです。製図の読み取りを頭の中に「プログラミング」した後、青写真を描く能力は魔法のようにやってきました。情報を取り込むのに時間がかかりましたが、私自身が「プログラム」された後、その技術はかなり突然現れました。チェスプレーヤーについて調べた研究者たちはチェスの名人はパターンを頭に取り込むのに時間を使う必要があると話していました。私はこのことがとてもよくわかります。私は処置施設を設計するとき、部分を描いた絵と過去に見た施設の一部分を頭で考え、新しいデザインに再構築します。それは、私が部分部分を三次元の動きのある映像に再構築できることを除いては、CADの設計デザインのメモリーから中身を引き出すようなものです。カリフォルニア大学のコンスタン・マイブレースとブライアン・シーゲルは才能のある自閉症のアーティストは部分から全体を構築するということを発見しました。「トップダウンの思考」ではなく、「ボトムアップの思考」なのです。

教師と良き指導者

アスペルガーの子供やティーンエージャーたちは、才能を伸ばすのを助けてくれる教師が必要です。才能を就業可能なスキルに発展させることの重要性はいくら強調してもし過ぎることがありません。私のようなビジュアル思考の人はコンピューター・グラフィックス、製図設計、コンピューター・プログラミング、自動車修理、コマーシャル・アート、産業施設のデザインや動物に関わる仕事のような分野の専門家になることができます。音楽、数学、記憶型の子供たちは数学、会計、エンジニアリング、物理、音楽、技術や法律の翻訳、他の専門的なスキルに卓越することが可能です。もし、数学の才能が真に優れたものでなければ、図書館科学、会計、エンジニアリングやコンピュータのコースをとることを薦めます。専門的なスキルを持つことで就業の可能性がかなり高まるでしょう。 中程度の才能の数学者や物理学者に対する仕事はほとんどありません。

自閉症の人は社会的なスキルが弱いので、人々が雇用したいと思うような何かに秀でることでその欠点を補うことができます。 教師たちは、話し合いの上、楽に雇用が得られるような分野に導いてあげる必要があります。仕事を見つけるのが難しいため、歴史を専攻することは良い選択ではありません。歴史は、学校でのメインの学習科目より趣味にしたほうがいいでしょう。

高機能自閉症とアスペルガーのティーンエージャーの多くは学校に退屈して不品行をします。彼らは将来役に立つ分野を教えてくれる指導者が必要なのです。私には高校のとき、科学研究のライブラリーの使い方を教えてくれた素晴らしい科学の先生がいました。コンピュータは変人であったり「コンピュータ・マニア」であることが許される最高の分野です。良いプログラマーはスキルで認めてもらうことができます。私はとても成功している自閉症のコンピュータのプログラマーを幾人か知っています。高校で退屈している学生は、コミュニティ・カレッジでプログラミングやコンピュータを使用した製図のコースをとるというのも手です。

自閉症の人たちは 社会性の欠点を補うため何かに卓越し、仕事の素晴らしさで認められる必要があります。人々は才能を敬うものです。彼らはキャリア・スキルを教えてくれるようなコンピュータ・プログラマー、アーティスト、製図技師のような良き指導者が必要です。よく「どうやって指導者を見つけるのですか」とよく聞かれますが、どこで良き師が見つかるかわからないものです。たとえば、スーパーマーケットのレジに並んでいるかもしれません。私の場合、畜産産業における最初の良き師に出会えたのは、とあるパーティで彼の保険外交員をしている奥さんに会ったことからでした。 彼女は手で刺繍を施した私のウエスタン・シャツを見て話しかけてきたのです。私はそのシャツに何時間もかけてステア・ヘッドを刺繍したのです。自閉症の人はコンピュータ会社のバッジをつけた人を見つけたら、近づいていって、成し遂げた仕事を見せることです。

2001年12月