執筆者のノート:ステファン(スティーブン)・エデルソン博士
「回復」についての話
自閉症のコミュニティにおいてひとつの境界線が出現していますーこの疾病を持つ人の一生に対する考え方を根本的に定義するほど影響力のある見方です。
境界線の片側にいる人々は言います。自閉症は、一生涯の神経発達障害であり、将来的にも明るい見通しがなく、進歩は限られており、治療効果がほとんどない、生涯にわたる疾患である、と。
この「進歩が限られており、治療効果がほとんどない生涯にわたる疾患である」という表現に、境界線のもう片側にいる両親たちや専門家たちは懐疑的です。彼らは代わりに自閉症界の言語においては新しい、次の一語を用います。4つの短い音節で成り立つたった一つの単語、しかし、この偉大な論議を要約している「回復」という言葉です。
バーナード・リムランド博士は自閉症に対する生物医学的そして行動面における効果的な治療法を確定するために精力的に尽くしました。地球上からこの悲惨な障害を消し去ろうと願ったことはよく知られるところです。博士の Defeat Autism Now! (今、自閉症に打ち勝とう)のプログラムの名前は、自閉症を今打ち負かそう、という博士の心からの願いをそのまま表しています。
当初、自閉症を打ち負かすというゴールは多くの人々にとって夢物語のようなものでした。ほとんどの人は自閉症決定説を信じていました。それは、(自閉症の)子供たちは生まれながらにして持つ潜在的に可能な範囲でのみ改善し、多くの子供たちはほとんど打つべき手が無く、家族は子供を施設に移す準備をしなくてはいけないというものでした。この見方は当時の現実を投影しています。というのは、Defeat Autism Now!の活動が始まる前、自閉症研究所は、40年もの歴史において自閉症から回復したという報告をほんの一握りしか受け取っていなかったからです。
しかし、過去20年における自閉症の急増という悲惨な状態は多くの優れた人々の気持ちをこの論議に引き寄せ、新しい 探求の道が開けました。2003年までに予期しなかったような数の自閉症の子供たちが、生物医学的方法とセラピーとの両方のアプローチで著しく改善し、さらに進歩しているというサクセスストーリーを 両親や医師たちが私たちに語り始めました。これらの子供たちの多くはかつて臨床的に自閉症と診断されましたが、もはや自閉症の診断基準を満たさず、医師、学校、そして両親は子供たちがもはや障害者とは考えられないと喜んでいます。
私たちの研究所に最初の報告がいくつか届いたとき、私たちは懐疑的でした。古典的な自閉症からの回復は大変稀であったからです(もちろん、20年前まで自閉症自体も大変稀だったのですが)。しかし、両親や医師たちと多くの会話を重ね、治療前や治療後のビデオや文章を見直した後、リムランド博士は子供たちの中に自閉症から本当に回復しつつある子がいることに気づき、大変喜びました。レポーターのダン・オルムステッドがリムランド博士も賞賛していた「自閉症の時代( The Age of Autism ))という彼の連載で語っていたように、カナーが最初に発見した11人の自閉児のうちの1人であるドナルドも12歳で金塩(キレーションの代用として効用がある可能性があります)で治療を受けたとき著しく回復しました。おそらく自閉症の根本原因や、回復の可能性は気づかれることなく、本当はまさにいつも私たちの目前にあったのかもしれません。
いい報告を受け取る頻度が増すにつれて、自閉症研究所は、回復した子供やほぼ回復した子供の両親に私たちのウエブサイトwww.AutismIsTreatable.comに登録してくれるよう頼みました。また、子供たちが自閉症であったことを知るためにどんな文書を提出できるか知らせてくれるよう頼みました。今日までに千百人以上の両親たちがこのサイトに登録しています。
リムランド博士はこれらの子供について語るとき、「治癒」という言葉を使用したがりませんでした。その代わり、もっと適切な単語である「回復」という言葉を好みました。リムランド博士は、カリフォルニアのヴァン・ナイスにある Children's Corner Schools の理事長で、自閉症研究所とDefeat Autism Now!の支持者であるスタン・カーツが、回復とは何を意味するかを解説した次の例えが気に入っていました。
「車にはねられた男性がいたとします。足の骨が折れ、脳に損傷を受けました。この時点でこの男性は障害者とみなされます。それが、集中的なリハビリを受けた後、再び多少びっこをひきながら歩けるようになり、神経系の問題は残っていても普通に生活でき、あまりにもよく治ったため、以前事故にあったかどうかわからないほどだとします。それが回復です。」
「この例と自閉症の唯一の違いは、私たちの子供たちは車にはねられた影響がさらに残りやすく、車の破片が体に残っていることが多いということです。私たちは、その破片を体から取り除いたり、通りに出ないようにしたりと、回復に向けて最良の機会を与える必要があります。」同様に、かつて自閉症と診断され、現在、以前の問題行動の片鱗が見られるだけの子が多くいます。例えば、子供によっては軽い「こだわり行動」がある子もいれば、好きな話題に過集中する子がいるなどです。回復した子供は多くの場合、ぐずぐずしているところはありますが、 独立して生活でき、楽しく、意義ある仕事を持ち、他人との実りのある関係を楽しんでいます。彼らは「治癒した」わけではないかもしれませんが、かつて普通の将来へつながる道を遮断していた悲惨な症状から確実に回復したわけです。
しかし、自閉症からの回復という考えは、やはり反発を招いています。批判する人々は、この考えはでたらめで、回復は不可能だと述べています。いわゆる「回復した子供たち」は始めから自閉症ではなかったと言う人や子供たちは単に「一時的に回復」したにすぎないと主張する人までいます。
子供たちの両親は、勇気を出して、この疑う人々にビデオを見るよう誘いかけています。www.Autism-RecoveredChildren.orgのアーカイブのセクションにあります。
このウエブサイトのビデオの1つは、オーバーン大学自閉症センターの理事長の1人であるカロリーヌ・ゴメス博士が解説しています。ビデオにはスレーターというDefeat Autism Now! による生物医学的な治療を受けた患者が出ています。ゴメス博士によると、スレーターは彼女が過去20年間見てきた患者のうち唯一自閉症の診断がとれた子供だということです。このビデオで、ゴメス博士がADOS(自閉症診断の基準になる検査 )をスレーターに施すところ、またスレーターのDefeat Autism Now!アプローチの治療を受ける前と受けた後の様子を見る事ができます。この記録でスレーターがたった10ヶ月の間に、明らかに自閉症から回復したことがわかります。
自閉症研究所では、両親たちに誤った希望を持たせることのないようとても気をつけています。しかし、子供たちが回復、または回復に近い状態になることが可能であるなら、まったく希望を与えられないより、希望は誤りだったというほうがずっと素晴らしいのです。自閉症研究所は「自閉症は治療可能である。回復は多くの子供にとって可能である」と述べ、現実的な希望を抱かせるようにしています。もちろん、どの自閉症児にも回復、または回復に近い状態が可能だと保証することはできません。しかし、いつの日かこれが現実になるよう願っています。
実は、この希望は全く手の届かないものではありません。非常にいい例が、かつて最も頻繁な精神遅延を引き起こす疾患であったPKU(フェニルケトン尿症)です。PKUを持つ子供は中度、または重度の精神遅延があり、当初回復の望みはないとされていました。しかし、いったん学者たちがこの障害の根本的な原因を理解し、 簡単なスクリーニング・テストを作成し、PKUを持って生まれた新生児を確定し、それから、ただちにその子供たちに食事療法を施したのです。その結果、現在ではアメリカのPKUの症例は大変少なくなりました。自閉症もいつの日か完全に治療、もしくは予防さえ可能なものになるかもしれません。
リムランド博士は、没前の数ヶ月しばしば、自閉症から回復した子供を持つ親が嬉々として自閉症研究所に自分たちの話をしてくる、ということを語っていました。 何十年か前には希望がないと考えられていた障害から多くの子供が劇的に回復していることを知り、博士の顔は明らかに大変誇らしげでした。主に博士自身の生涯にわたる努力によるおかげで、私たちは「希望がない」状態から「多くの子供に希望が持てる」状態に改善できたのです。大変な努力、そして運さえあれば、私たちは「全員の子供に対して自閉症を予防し、回復させる」という究極の目的を果たすことができるでしょう。
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